居住支援事業の今と今後
#住居 #法律
2025.08.11
改正住宅セーフティネット法等に関する全国説明会
先日、国交省・厚労省合同での「改正住宅セーフティネット法等に関する全国説明会」があり、そこで今後の居住支援事業の方向性等の説明がありました。
居住支援事業とは、主に高齢者や障がい者、子育て世帯等を対象として、住宅の確保を目的に行われている国が主体の事業です。助け合い村でも2022年4月に県の指定を受け、居住支援活動を行ってきました。
現行の法律では、セーフティネット住宅(※1)による住居数の確保と、居住支援法人による入居までのサポートが主だった施策です。
2025年10月より施行される改正法では、新たに居住サポート住宅という見守り等安否確認を備えた住宅制度の創設をするなど、主に入居可能な物件の拡充に重点が置かれたという印象です。
一方で、通常の民間アパート等への入居促進に関する部分については、消極的な印象です。残置物の処理ルールや家賃債務保証業者の認定制度導入についてなどが方針として示されていますが、いわゆる「義務化」のような拘束力があるものではありません。
説明会の中で、居住サポート住宅について、例えば、安否確認サービスや、相談サービスなど家賃とは別に利用料を徴収してもよいという説明があり、この点について出席者から他の施設(サ高住やグループホーム、「無料低額宿泊所」など)との法的な住み分けはどうなのかといった質問も出ていました。
現状、高齢者の入居先としてサービス付き高齢者住宅があり、また精神や知的に障がいのある方の入居先としてグループホームがありますが、新たに創設された居住サポート住宅が同様の役割になってしまう可能性があると感じます。
『希望する住居』と『納得できる住居』
ところで、これまでの相談事例において、相談者の大半は、「住めればどこでもいい」と思っていません。「自分の生活にあわせ、自立して希望する地域で住みたい。でも方々で断られてしまう」という経緯で相談に来られます。
共同生活や干渉されることがストレスで、高齢者向け住宅や、グループホームには住めない、住みたくないという方もいます。頻度としては少ないながら、誰かに干渉されるであろう居住サポート住宅に果たして住みたいと思えるのか、という極めて単純な疑問が残ります。
入居の問題は、大家と入居者、相互の利益が確保できるのかという問題です。入居者側は「住居確保」という利益がはっきりしているので、端的に言えば、大家の利益が確保されるかどうかの問題といえます。
孤独死、近隣住民とのトラブル、家賃滞納や夜逃げ、部屋の損壊など、大家が抱えるリスクや不安は数多くあります。その中で、少なからずそのようなリスクが高そうな入居者へ部屋を貸せないというのは大家側の利益確保の観点からみれば当然です。
大家側の全てのリスクを取り除くことは不可能といっても過言ではありません。それゆえ、今回の法改正で入居可能な住居の拡充という方向に針を進めたのだと思います。
居住支援法人の役割は、民間アパートか居住サポート住宅なのかを問わず、自分らしい生活ができる住居を確保できるようサポートすることであると思っています。もちろん、希望通りの物件に入居することは難しく、場合によってグループホームや施設などの選択肢を検討する必要がありますが、何を優先し、何を妥協するのかを一緒に整理し、『希望する住居』ではなく『納得できる住居』の確保をサポートすることが重要なのではないでしょうか。
※1.入居希望者が物件の登録条件(例えば70歳以上の高齢者入居可など)を満たしている場合、正当な理由なく断ってはいけないというルールが定められた住宅