難航した施設入所支援の事例
#住居 #支援事例
2022.01.24
私たちが支援を始めた時のTさんは75歳、脳梗塞で何度か入退院を繰り返し、自宅での生活が困難になったため施設に入所中でした。
収入が年金の月8万円ほどで、施設費を全額支払えないため、生活保護を受給していました。
相談は入所中の施設の相談員からで、その施設には、金銭面での問題でずっと居続けることはできないため、別の施設に入所する支援をしてほしいという内容でした。
施設の相談員もTさんの入所先について、いくつかの施設へ打診したものの、身元保証人となる親族がいないと入所できないとすべて断られたそうです。
そのため、身元保証人を引き受けてほしいこと、施設入所までの契約などの手続きを支援してほしいことなどが主な要望でした。
Tさんを支援するにあたり、財産状況などを精査しましたが、入退院、施設入所などで預貯金は底をつき、助け合い村と身元保証契約を結ぶためのお金の捻出は望めない状況でした。
私たちはTさんの状況を考慮しながら検討し、身元保証契約は結ばず、事務委任契約での支援をすることにしました。
まず、取り組んだのは、Tさんの入所先を探すことです。
Tさんは要介護5だったため、特別養護老人ホームの入所を検討し、実際に入所の打診をしたところ、入居可能な施設もありました。
ところが、ここで大きな問題がありました。
Tさんの年金は月額8万円前後で、特別養護老人ホームの費用はなんとか支払うことができます。しかし、Tさんには持病もあり、薬代などの医療費がかかります。それまでは生活保護を受給していたため、薬代などの医療費の自己負担はありませんでした。しかし、特別養護老人ホームに入所した場合は、年金額が施設費を上回るため、生活保護が廃止され、医療費に自己負担が発生することになります。
つまり、入所はできても維持ができないのです。
また、入所中に、病院に入院した場合などは、施設費と入院費の両方を支払わなければならず、年金だけではとても支払いができません。
そこで方針を変え、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)で入居できる場所を探すことにしました。
サ高住は、重度の介護を必要とする方の受け入れができないところもあるため、本人の身体状況や経済状況などを交え、いくつかの施設へ相談し、受け入れ先を見つけることが出来ました。
ここでまた問題が発生します。
Tさんが生活保護を受給している自治体は、サ高住への入居を認めていなかったのです。別の自治体では認めているところもあるため、事情を詳しく説明しながら働きかけましたが、認めないという判断を覆すことはできませんでした。
厚生労働省に問い合わせをしたところ、そういった判断については各自治体に委ねているという回答でした。同じ条件下において、一方は認め、一方は認めないということに大いに疑問を感じましたが、今回は別の方法を検討するしかありません。
そこで、受け入れ可能という返事をもらったサ高住がある地域の自治体の生活保護担当者へ相談をすることにしました。
生活保護を継続受給しなければ生活が成り立たないこと、他の自治体でサ高住の入居を認められなかったことなど、状況を説明したところ、その自治体で新たに生活保護の受給とサ高住への入居を認めてもらえることになりました。
施設入所の支援は、受け入れ先が見つかれば、そこまで難航するものではありませんが、こういったケースもまれにあります。 紆余曲折ありましたが、今、Tさんは新しい入居先で新しい生活を送っています。