見送る側と見送られる側の思い-ある葬儀の事例-
#支援事例 #葬儀納骨
2022.02.21
自分の希望通りの葬儀で送ってもらうためには、あらかじめ葬儀内容や納骨についてエンディングノートにしっかり書いておき、準備しておくことが重要です。
しかし、なかには、エンディングノートに記入した内容通りにならないこともあります。
今回ご紹介するのは、エンディングノートに沿った葬儀を執り行おうとした事例です。
Aさんは闘病期間が長かったこともあり、ご自分の葬儀の方法や、納骨先をきちんと決め、エンディングノートに記入していました。
Aさんの希望は次のようなものでした。
1.遺影はいりません
2.告別式はシンプルにしてください
3.祭壇は最低限のものにしてください
4.葬儀の時は○○のクラシック曲を流してください
5.契約している樹木葬墓に納骨してください
『あまり大げさにされたくない。』
生前のAさんの人柄がよく出ている内容でした。
しかし、葬儀の準備段階で問題がおきました。
Aさんの葬儀の喪主を引き受けたのは、実の姉のBさんでした。
わたしたちは、保管していたAさんのエンディングノートを見せ、『葬儀はなるべくシンプルに』という希望を伝えました。
しかし、その内容はBさんにとって、到底納得のいくものではありませんでした。
姉妹はとても仲が良かったため、Bさんは、『妹はお花がとても好きだった。だから、ちゃんと遺影を飾って、たくさんのお花の祭壇で送ってあげたい』と強く希望したのです。
わたしたちも葬儀や納骨などを委任されている立場上、Aさんの希望通りに進めることが原則でしたが、よく話し合いをした結果、Bさんの希望を受け入れることになりました。
そうして、Aさんの希望通りではありませんでしたが、無事葬儀を終えることができました。
この葬儀の事例を通じて、『見送られる側』の希望が尊重されるべきであるけれど、『見送る側』の希望も同じぐらい尊重されるべきだと痛感しました。
葬儀は本人のものであると同時に遺族のものでもあります。
今回、エンディングノートの通りに葬儀を行っていたら、姉のBさんはずっと心残りになってしまったことでしょう。
Aさんは、エンディングノートに記入する葬儀の内容を考えるとき、何を思っていたでしょうか?
生前、Aさんは高齢の姉には、自分のことで負担をかけたくないと常々おっしゃっていました。だとすれば、エンディングノートに記入した葬儀の内容も、そういった思いがあったのではないか。
Bさんと葬儀内容について話し合いをしている最中、そんな考えが、ふと頭をよぎりました。
自分の意思や希望を伝える方法として、エンディングノートはとても良い手段です。
ただ、一方的に自分の意思や希望だけを伝えるのではなく、受け取り手である家族や親族に思いを馳せることも忘れてはいけない、そう考えさせられる事例でした。