施設入所に抵抗感のあったAさんの事例
#住居 #支援事例
2022.05.09
「最期は自宅で迎えたい」
そう望む方が多いのが実情です。住み慣れた自宅で、長年過ごした部屋で最後まで過ごしたいと思うのは自然な思いです。
Aさんもそうでした。
95歳の女性で要介護5、身寄りはいなかったので一人暮らしです。自宅生活の最後の1年は、ほぼ寝たきりでした。
ケアマネージャーは10年近く担当で、Aさんのことは何でも知っています。なじみのヘルパーとも長いお付き合いで、利用頻度は日に3回、お食事もAさんの好みに合わせておいしく作ってくれます。訪問医と訪問看護や、週に3日のショートステイも利用していて、Aさんは充実した暮らしに大変満足していました。
しかし、介護費用総額は介護保険ではまかなえず、大きな自己負担が発生し、年金では支払いきれずに貯金は毎月減っていました。
心配をしたケアマネが、お金の管理と身の回りのお世話のため、私たち「助け合い村」を紹介してからのお付き合いです。
私たちは、ケアマネと共に、何度も施設に入ることを提案しましたが、Aさんは自宅で過ごしたいと言って承知しませんでした。
何か、施設に対して良い印象を持っていないようでした。
40度近い高熱が3日続いた時も、病院に行かないと言って、訪問医と看護師のお世話になりました。この時ばかりは、私たちもヘルパーも訪問するたびに亡くなっているのではないかと気が気ではありませんでした。
そんなある日、Aさんは脳梗塞で倒れて救急車で病院に運ばれました。治療しましたが障害が残り、他にも病気が見つかりました。
ついに医師から「もう自宅での生活は許可できません」と言われてしまいました。
Aさんは、どうすることも出来なくなり、しぶしぶと有料老人ホームに入居しました。
入居の効果は、すぐに金銭面に出ました。毎月の利用料などの費用総額は、年金額以内に収まり、少しずつですが貯金ができるようになったのです。
元々は社交的な方で、職員からも丁寧に声掛けをしていただき、レクリエーションにも参加して「おしゃべりも楽しい」と話すようになりました。食事にお寿司が出たこともあり、「お刺身がおいしい。お寿司は久しぶりだった」と喜んでいました。誕生会で、花束をもって満面笑顔の写真も残りました。
体調が悪化してからは、職員待機室に近い部屋へ移りました。職員は時間があれば顔を出して、声をかけてくれ、背中をさすって、手を握ってくれます。
医師や看護師の対応も万全で、とても安心されていました。
Aさんは、「ここに来てよかった。もっと早く来ればよかった。何度も提案してくれたのに断ってごめんね」と話してくれるようになりました。
Aさんがこの施設で過ごしたのは、ほんの数ヶ月の間でしたが、お亡くなりになる前に「お世話になったケアマネージャーさんやヘルパーさん、友人とこの施設の皆さんにありがとうと伝えてください。皆さんがよくしてくださるので、私はここで最期を迎えたい」と話していました。
幸いにも、見取り対応をしている施設でしたので、Aさんは最後まで職員に見守られながら静かに息を引き取りました。
介護施設に対する悪いイメ-ジがある方もいらっしゃると思います。相性の良し悪しや、ほしいサービスが足りないこともあるでしょう。
しかし、多くの職員は、入居者の意向を大事にしながら対応してくれます。
まずは、体験入居をして実際にどんな所かよく見て、検討してみることをお勧めします。