「負」動産を相続した事例から
#不動産 #支援事例 #相続遺言
2022.08.08
亡くなった親族の財産を相続したというAさんから相談がありました。
相続時には、負債額がわからなかったため、限定承認※1をしたが、処分できない不動産を相続してしまって非常に困っているという内容でした。
※1 限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続するという方法です。
預貯金などが150万円程度ありましたが、そのほとんどを家賃やローン等の未払い金の清算にあてたそうです。
そうして、残ったのが処分できない不動産でした。
有名な温泉観光地の近隣で、築40年程度の家が建ち、広さは50坪ほど。建築当時は基準を満たしていましたが、現在は基準を満たしていないため、新築が出来ない土地でした。
そのことを知らなかったAさんは、それなりの金額で売れるだろうと考えていましたが、当然買い手がつく不動産ではなく、なかなか処分ができません。
とはいえ、年に数回の庭木のメンテナンスや固定資産税がかかるため、Aさんとしてはこのまま放っておくわけにもいきません。
そもそも論になってしまいますが、今回のケースでは、わかっている財産だけを考慮しても、相続放棄をするほうが得策※2でした。
しかしAさんは、専門家に相談をすることなく自分で限定承認の手続きをしたため、適切なアドバイスを受けることができませんでした。
もし専門家に相談をしていれば、相続放棄という選択肢を取れたことでしょう。
※2 ただし、相続放棄をしたとしても、土地家屋の管理義務はなくなりません。
話を戻しますが、今回のケースを解決するためには、不動産を誰かに譲り渡す以外に方法はありません。
しかし、前述したように売却は非常に困難です。実際にAさんは10社以上の業者に断られています。
また、隣地の所有者に譲渡する方法も考えられるのですが、こちらも断られてしまったそうです。
実はこの問題はいまだに解決をみていません。
現在は、こういった処分できない不動産を専門に扱う団体に依頼し、無償譲渡先を探してもらっているところです。
それでも解決までにどのくらいの時間を要するのかわからないとのことです。
Aさんは譲渡先が見つかるまで、メンテナンス費用や固定資産税を支出し続けるしかありません。
この事例からわかるとおり、処分できない不動産は非常に厄介です。
相続してしまったがために、将来にわたり「負」動産を所有し続けなければならなくなることも多々あります。 親や兄弟姉妹がなくなり相続財産に不動産がある場合、また子に不動産を相続させる場合など、それが処分困難な「負」動産でないかどうかを、
事前に調査し、慎重に検討することをおすすめします。