後見人が必要になるとき
#後見制度 #法律
2023.05.22
<どんな時に後見人が必要になるのか?>
2020年4月の民法改正で「意思能力のない契約は無効」と明文化されましたが、意思能力の有無と認知症状の有無はイコールではありません。認知症になったからといって必ず契約時に後見人等を要するということではないということです。
認知症の方がした契約でも基本的には有効とされます。ただし、契約後に認知症によって意思能力がなかったと判断された場合には契約が無効となります。裁判等においても、認知症の方がした契約だからと一概に無効とはならず、意思能力や契約内容によって個別に判断がされています。
<後見人が求められる場合>
不動産の売買や遺産分割など、高額な取引になりやすく事後にトラブルになりやすいことに関しては後見人をつけることが一般的とされています。しかし、これらも後見人がいなければできないというものではありません。端的にいえば、利害関係者が、本人に後見人がついていることを求める場合以外においては、必ず要するものではないということです。
他方で、銀行関係の取引では、後見人を求められることがあります。主なところでは、銀行側が認知症であることを知り、口座が凍結されてしまうと、後見人がつかない限り、凍結の解除が望めません。
後見人がつく一番のメリットは、不利益な契約等から財産を守れることにあるといえます。後見人がついた以降は、本人が単独でした契約は無効となるため、例えば悪徳な訪問販業者やリフォーム業者につけこまれる心配がありません。
後見制度は有用な制度ではありますが、不必要に利用する制度ではありません。後見人等に対する報酬も発生します。また、一度後見人がつくと、原則亡くなるまで後見人がつき続けます。
「契約時や相続時に必要とする」、「一人暮らしで悪徳業者につけこまれる心配がある」など、早急に利用を開始したほうがいい場合もありますが、十分考慮したうえで検討することが重要です。
成年後見制度のおさらい
後見人は、財産管理と身上監護に関することほとんどのことを代理できます。契約行為についても、本人の意思確認等が必要なく、後見人単独で契約可能です。
成年後見には、大きく分けて法定後見と任意後見の2種類があります。
〇法定後見
認知症等によって判断能力が低下した際に、家庭裁判所に申立を行い、医師の診断結果に応じて、補助人・保佐人・後見人のいずれかが選ばれます。候補者がいない場合は、弁護士などの専門職から選ばれます。親族が候補者となることもできますが、候補者が後見人等に選ばれるとは限りません。
〇任意後見
認知症等によって判断能力が低下した際に、家庭裁判所に申し立てを行い、受任者が後見人となります。任意後見は事前の契約によって代理する内容や受任者を決めることができます。任意後見契約は基本的に認知症になる前に契約が必要ですが、認知症になってしまった後でも、公証人によって意思能力があると認められた場合は、契約を行うことも可能であるとされています。