『健康問答 本当のところはどうなのか?本音で語る現代の「養生訓」』のご紹介
#書籍紹介
2023.12.25
世の中には多様な健康法や治療法がありますが、その中からどれを信頼し選択するかは個人の判断に委ねられています。新型コロナウイルス感染症の流行によりワクチンや薬、予防法、免疫に関しての情報も錯綜するようになりましたが、どれも長期的な研究結果が得られていないためにまだ絶対に正しいと言い切れる情報はないように思われます。このような状況の中では、ますます冷静に情報を見極めるリテラシーが必要となるでしょう。
そこでご紹介したいのが『健康問答 本当のところはどうなのか?本音で語る現代の「養生訓」』です。
本書は埼玉県川越市にある帯津三敬病院の名誉院長であり医学博士の帯津良一氏と作家の五木寛之氏による対談本です。最初に「病気というものに完治はあるのか」「健康診断は毎年受けるべきか」「ガンの早期発見は幸運か」「サプリメントは、ほんとうに有効か」と いったQ(問い)が置かれ、それに対して二人が話し合うという形式になっています。全七章ありますが、第三章「現代療法の総チェック」 、第四章「ガン療法の総チェック」、第七章「いのちと養生について」は特に読み応えがあります。
五木寛之氏は「西洋医学も尊重するが、東洋医学も決しておろそかにしない。理論も馬鹿にせず、経験からくる直感も大事にする」姿勢で質問し、それについて、東洋医学や代替医療も積極的に治療に取り入れ、ホリスティック(体・心・命の人間まるごとを診る)医学の確立を目指す帯津良一氏が答えるのですが、この問答を読むと人間の身体の仕組みというのは西洋医学の科学的証明のみでは割り切れないのだということがよくわかります。
「Q37 代替療法は、ほんとうにガンに効くのか」ではこのような問答がかわされます。
五木 そういう予兆の、細かいところに、敏感にネットを張っているということが、すごく大事だと思うんです。それにはやっぱり、自分を観察すればいいわけだから、自分を知るということが大事なんですね。普通は、心を見つめるというじゃないですか。「見真」といって、自分の真実を見つめる。だけど、心だけじゃなくて、自分の体を見つめるということも、ものすごく大事なんです。体の声なき声を聞くという。私は「身体語」といっていますけれども、それと問答して考えていかなければいけない。
帯津 ええ。そうすれば、体の変調に気づきやすいし、自分の病気の数ある療法のなかでも、情報に惑わされずに、自分に合ったものを選ぶことができると思います。
本書では西洋医学の観点からは邪道だとされるスピリチュアル療法などのエネルギー療法やホメオパシーについても問答が交わされますが、そのどれについても、ある人には合う方法が他の人には合わないということはよくある、だから自分にその方法が合っているのかどうかを見極める目を持つことが重要なのだと二人は繰り返します。
また五木氏はこうも言います。「現代の医学、栄養学、生理学、心理学など、すべての学問や理論も、人間でいうなら、まだ小学生の域にも達していないのではないか。それを明快に割り切ったいい方をするから、おかしくなるのである。(中略)要するに『これ一つ』ではダメなのだ。」と。
本書が出版されたのは今から16年前の2007年ですが、健康法や医療情報を取り巻く状況は今もまったく変わっていません。そして対談を行った五木寛之氏は現在91歳、帯津良一氏は現在87歳でともに精力的に活動しておられます。健康について語り合ったお二人が今もお元気でおられることは、本書が読むに値する本であることを示していると言えるのではないでしょうか。