『在宅死のすすめ方完全版』のご紹介
#書籍紹介
2024.07.08
皆さんはご自分がどこで最期を迎えたいかを考えたことがあるでしょうか。
持病がなく健康体であれば、まだ先のこととして想像したことすらないかもしれません。また、身寄りがないのでがんになったり病気が進行したりしたときは病院で亡くなるしかないと思っている方もいるかもしれません。そして、自分ではなく家族をどのように看取るべきかを悩んでいる方もいらっしゃることでしょう。
そのような方々に今回ご紹介したいのが『終末期医療の専門家22人に聞いてわかった 痛くない、後悔しない最期 在宅死のすすめ方完全版』です。本書によると、人が亡くなる場所は「病院」「在宅(終の住処としての施設を含める)」「その他(外出先等事故死の場合)」の3種類だそうです。そして日本国民の約7割が「自宅」で最期を迎えることを希望していながら、実際にそれを叶えた人は2割に満たないというデータがあります。在宅医療や在宅看取り、在宅死についての情報が少なく、たとえ身寄りのない介護の必要な一人暮らしだったとしても、住み慣れた我が家で最期を迎えることができるという事実を知らなかったからかもしれません。
このことについては、本書で介護保険の申請の仕方や介護にかかる費用、訪問診療の頼み方、在宅死の相談窓口など、項目ごとに詳しく説明されていますので、自分や家族の今後が心配な方は一読してみると多少なりとも不安や疑問が解消するかと思われます。
また本書は、
●自宅で死にたい
●痛みを感じないで死にたい
●希望する形で死にたい
●お金と法律が知りたい
●自分と大切な家族のために
●サクッとわかる在宅死ロードマップ
の6パートで構成されていますので、この中から今の自分に必要なところをまず読んでみるだけでも今後の参考になるのではないでしょうか。
興味深いのは、本人が在宅死を望んだ場合に一番実現しやすいのは「身内のいない人」で、子どもや兄弟や親戚がいる場合「手厚く看護してもらったほうがいい」「孤独死したらかわいそう」などの理由で病院や施設を手配してしまうケースが多いという話です。とはいえ、本人の意向と家族の意向がすれ違うことは介護でもよくあることですし、それぞれに様々な事情があるだけに一概に「在宅死が絶対に良い」とは言えません。痛みが強い場合や自分で自由に身体を動かすことができない場合は、随時適切なケアを受けられる病院やホスピスのほうが心身とも穏やかに最期を過ごすことができる場合もあるように思います。
本書では”リビングウィル”(終末期の医療についてあらかじめ意思を伝えておくもの)や”人生会議”(人生の最終段階にどのような医療やケアを受けたいと考えているかについて、あらかじめ自分で考えたり家族や医療者、介護者と話し合っておいたことを共有する取り組み)の活用も説かれていますが、何も起こっていない段階での延命治療への考え方と、がんを宣告されたあとでのそれとでは180度変わることもあるのが人間です。そのため、一度決めた死に方を今後覆しても良いのだという柔軟性を持ちながら、最後まで自分らしく生きていくことが重要かと思われます。